Archive for リースの会計と税制

リースに印紙は必要?

一般に課税文書には印紙を貼付しなければいけません。
印紙を貼付するのは、印紙税を納税するのが目的です。
しかし、リース取引においては、印紙の貼付は必要とされません。

課税物件表

課税文書には印紙の貼付が必要となります。
印紙は、収入印紙のことで、契約書や領収書に貼付します。
それによって、印紙税という税金を納税できます。
印紙税は、文書に課される国の税金ですが、すべての文書が課税されるというわけではありません。
すべての文書の中から、事業活動に伴って作成する契約書や領収書などの、印紙税法の「課税物件表」に掲げる文書だけが課税の対象となります。

リースと印紙の関係

印紙は必要ありません
リースについてみると、リース関係の契約書は「課税物件表」に掲げられていません。
したがって、リースにおいて収入印紙を貼付する必要がないということです。

リース契約について

平成元年3月までは「賃貸借契約書」が課税物件表に掲げられていたので、賃貸借であるリースの契約書は、賃貸借契約書としての扱いを受け、印紙税の課税文書でした。
しかし、平成元年4月から賃貸借契約書が課税物件表から削除されたため、リースの契約書は不課税文書となりました。
リース会社とサプライヤーは、リース契約締結後に売買契約を締結します。

契約の段階

契約のときに、リース会社はサプライヤーに注文書を発行します。
この注文書が売買契約の申込みを証明する文書です。
そして、サプライヤーは注文請書を作成してリース会社に発行します。
この注文請書が売買契約書です。
リース取引の主な対象物件である事務用機器や産業機械等の売買契約書なども、印紙税法の課税物件表に載せられていません。
したがって、これらの注文請書に収入印紙の貼付は不要です。

非営利法人のリース会計

非営利法人もリースを利用する場合には、会計基準に従います。
従来、病院、学校、公益法人などの非営利法人に関しては、会計基準は整備されていませんでした。
しかし、非営利法人においてもリースの利用が広く行われていることから、最近になって公益法人に関しても会計基準お整備が進んできました。

病院

病院を対象にした会計基準を「病院会計準則」といいます。病院会計準則は、昭和40年に制定されました。
その後、企業会計分野における会計制度改革の進展にあわせて、平成16年に改訂されました。
その目的は、「すべての病院を対象に、会計の基準を定め、病院の財政状態及び運営状況を適正に把握し、病院の経営体質の強化、改善向上に資すること」となっています。
リース取引に関して、病院会計準則とリース会計基準との違いは、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引とを区分することは同じですが、ファイナンス・リース取引の会計処理方法が売買処理だけになっている点が、リース会計基準との違いです。

学校


学校法人を対象とした会計基準を「学校法人会計基準」といいます。
昭和46年に制定され、その後平成20年に改正をうけています。
学校法人会計基準では、リース取引においても一般企業の会計基準と同じ会計処理となります。
ファイナンス・リースでは売買処理、オペレーティング・リースでは賃貸借処理が行われます。

公益法人

公益法人を対象とした会計基準を「公益法人会計基準」といいます。
公益法人会計基準は、公益法人の活動状況の透明性を高めるための改正を受けました。
この改正によって、公益法人は、貸借対照表などの財務諸表を作成することになりました。
リース取引においても、一般企業の会計基準と同じ会計処理となります。
すなわち、ファイナンス・リースでは売買処理、オペレーティング・リースでは賃貸借処理を行います。

リースの会計と税制

設備を導入する必要がある場合、リースを利用する選択肢において、リース会社に関して適用される制度があります。
リースには、リース独自の会計処理方法や特別の税制に従います。

会計の場合


リース会計基準における資産の計上方法を説明します。
所有権移転ファイナンス・リース取引と、所有権移転外ファイナンス・リース取引とでは、扱いが異なります。
すなわち、リース会社は、所有権移転ファイナンス・リース取引についてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース投資資産として資産に計上します。
それから、次の3つの方法で会計処理を行います。
リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法、売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法という3つの方法のうち一つを選択して会計処理を行います。

税制の場合

リース税制では、リース会社がリース取引に関して、リース讓渡を行ったものとされます。
すなわち、長期割賦、販売等として所得の計算をします。
そのため、リース料収入は売上として計上するので、益金となり、売上原価を損金に算入できます。
リース会計基準の適用をうけるリース会社は、利益が前倒しになることから、税務上、利息相当額部分を20パーセントにして、所得の計算をすることを選択することが、特例で認められています。

賃貸処理でリースを行う

リース取引においては、賃貸処理で行うことができる場合があります。
中小企業の多くは、賃貸処理を行っています。

賃貸処理

リースで物件を導入する際に、所有権移転外ファイナンス・リース取引を行う場合、賃貸処理で行うことができる場合があります。
リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引について、少額リース資産の賃貸借処理が認められています。
また、中小企業は、中小企業会計指針に従い、これまで同様、所有権移転外ファイナンス・リース取引を賃貸借処理できます。

リース会計基準

リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引が次の要件のいずれかにあたる場合には、賃貸借処理ができます。
重要性の低い資産に関して、購入時の費用処理がなされていて、個々のリース物件のリース料総額が基準額以下である場合で、かつ期間が1年以内の場合、企業の事業内容からみて重要性の低いリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下の場合のいずれかの場合には、賃貸借処理ができます。

中小企業の会計処理


中小企業の場合には、若干異なります。
中小企業は、中小企業庁、商工団体などが作成した中小企業の会計に関する基本要領にしたがって、リース取引に係る借手は、賃貸借取取引又は売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う」こととされました。
実際に、中小企業のほとんどは賃貸借処理をしています。

会社計算規則

会社計算規則で、会計監査人設置会社や公開会社は、注記表を作成することが義務となっています。
そして、ファイナンス・リース取引で賃貸借処理を選択した場合、リースする固定資産に関して注記を付けるることが義務付けられています。
注記には、貸借対照表、損益計算書の欄外に会計に関する情報を示すことで、株主や債権者に対して情報を開示する意味があります。

税制の扱い

税制において、会計上、リースを賃貸借処理した場合、リース料は償却費として損金経理した金額に含まれます。売買処理では必要とされる減価償却の記載は、賃貸処理では、記載は必要ありません。
消費税の扱いは、賃貸人から賃借人へのリース資産の売買として扱います。
この点は、売買処理と賃貸処理とで違いはありません。

リースの流れ

ファイナンス・リースを行う場合は、リース会計と税制について、リース期間定額法に従って行われます。
会社の資産に比例して、リース資産の総額が低い場合は、簡便な会計処理を利用できます。

ファイナンス・リースの場合


所有権移転外ファイナンス・リース取引でリースした場合を例に説明していきます。
ユーザーは、所有権移転外ファイナンス・リース取引について、次の条件で取引を行ったことにします。
まず最初に、リース債務の返済に関してスケジュールを作ります。
その際には、リースにかかる利息を利息法で計算します。
リース資産の減価償却はユーザーが行います。
計算は、リース期間定額法に従います。
リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引では、簡便な会計処理が認められることがあります。
つまり、ユーザーのリース資産総額の重要性が乏しい場合、簡便な会計処理ができます。

簡便な会計処理

簡便な会計処理には、2種類あって、リース料総額から利息相当額を控除しない方法と、利息相当額を定額法により配分する方法のどちらかを選択します。
リース料総額から利息相当額を控除しない場合は、リース資産、およびリース債務をリース料総額に計上します。
ただし、支払利息を計上せずに、減価償却費のみを計上します。
利息相当額を定額法により配分する場合、リース資産、およびリース債務は、原則法同様に計上します。
しかし、利息相当額の定額配分なので、利息法での計算は必要ありません。
リース資産の減価償却は、リース期間定額法でユーザーが行います。

通達から法令でのリース税制へ

最近まで整備されていなかったリース税制は、平成10年度の税制の改正によって、ようやく整備されました。
今では、法人税法がリースの取引を規定しています。

税制の不備

実は、リース関係の税制は最近まで整備されていませんでした。
平成10年度の税制改正で、「法人税法施行令」に、「リース取引」の規定が設けられるまでは、通達しかなく、国税庁長官通達で定められていました。
それには「リース取引に係る法人税及び所得税の取扱いについて」と、「リース期間が法定耐用年数よりも長いリース取引の税務上の取扱いについて」の2つの種類がありました。
これらの2つの通達が、リース取引に関する税務上の取扱いを規定していました。

税制の整備


しかし、リース取引の税務上の扱いが法的な根拠がないのは問題であるとして、平成10年度税制改正で、ようやくリース税制が法制化されています。
すなわち、国外にあるリース資産の減価償却方法を規定すると同時に、法人税法施行令でもリース取引を規定しています。

法人税法で規定

さらに、平成19年度税制改正で、リ一ス会計基準と税務との調整を図り、法人税法がリース取引を規定しました。
リース税制において、「リース取引とは、資産の賃貸借で、賃貸借期間の中途において解除をすることができないもので、賃借人が賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができると同時に、資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているもの、という要件をいずれも満たす取引のことをいいます。
これは、ファイナンス・リース取引にあたります。
リース税制は、リース取引を「所有権移転リース取引」と「所有権移転外リース取引」に分類します。
ユーザーは、所有権移転外リース取引のリース資産について、リース期間定額法にしたがって減価償却を行います。

消費税の取扱い

リース取引の消費税では、法人税と同じように、賃貸人から賃借人へのリース資産の売買とみなします。
つまり、ユーザーはリース取引をはじめた時点で、リース料総額でリース資産を譲り受けたと処理され、リース料総額にかかる消費税額を仕入れに係る消費税として処理します。

リースの会計基準

リース会社の会計処理はリース会計基準で行われています。
上場企業においても、リース取引の会計処理をリース会計基準に従って行っています。
リース会計基準は、それぞれの会計処理方法が定められています。
企業会計基準委員会は、平成19年3月にリース会計基準を公表しました。
このリース会計基準にしたがって、上場企業などの会社は、リース取引の会計処理を行います。

会計基準


リース会計基準では、リース取引は、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類されます。
ファイナンス・リースは、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースに分類されます。
そして、ファイナンス・リース取引以外のリース取引がオペレーティング・リースに分類されます。
ファイナンス・リースの会計処理方法は、売買処理をしますが、少額リース資産においては、賃貸借処理をすることができます。
また、オペレーティング・リースについては、賃貸借処理になります。

ファイナンス・リースの取引

ファイナンス・リース取引は、リース期間途中に契約解除できないリース取引や、リース物件からの経済的利益を実質的に享受でき、リース物件の使用に伴って生じるコス卜の実質的な負担になるリース取引の要件を備えたリース取引です。

所有権移転と所有権移転外

ファイナンス・リースは二つに分類されます。
所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引です。
所有権移転ファイナンス・リース取引は、讓渡条件付リース取引、割安購入選択権付リース取引などです。
所有権移転ファイナンス・リース取引以外が、所有権移転外ファイナンス・リース取引です。
なお日本のリース取引は、所有権移転外ファイナンス・リース取引が中心です。