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民法とリース

コピー機などOA機器をリースするには、リース契約を結ぶことになります。
一般的な契約では民法に従います。
したがって、リースも民法の規定に従うことになります。

民法の典型契約

民法では、典型契約という規定があって、
「贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、
 請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解」の13種類です。
このなかにリース契約は含まれていないのです。
すなわち、リース契約は、典型契約ではありません。

リースが典型契約にならないわけ

ファイナンス・リースのほとんどが事業者間で行われる取引で、ユーザ一とリース会社間で契約書が交わされており、民法にファイナンス・リースを規定しても、誰がその規定を使うか想定されません。
このため取引実態上の必要性がまったくないといわれ、改正もしてもらえないというわけです。

リースが典型契約だったら

もしファイナンス・リース契約が民法の典型契約となったら、ユーザーとリース会社間のトラブルが生じて裁判となるようなときに民法が判断基準となります。
今までの規定では任意であったので合意ですんでいた問題が裁判沙汰になりかねません。
リースを典型契約にすると、よい面と悪い面の両方があるということができます。

リースの犯罪への悪用

リース物件の契約をする際、気をつけるべきことがあります。
リースは、マネーロンダリングに利用されることがあります。

マネーロンダリング


犯罪収益移転防止法という法律が、マネーロンダリングとテロ資金供給対策のため、平成20年3月1曰から施行されています。
マネーロンダリングが放置されると犯罪による収益が将来の犯罪活動に使用されるほか、犯罪組織がその資金をもとに一般社会の経済活動に介入し重大な悪影響を及ぼすおそれがあることから、マネーロンダリングの防止はわが国のみならず国際的な犯罪対策上の重要な課題になっています。

リース会社とのかかわり

ファイナンス・リースを行なう場合、受け取ったリース料が犯罪による収益かもと疑われる場合は所定の行政庁に届け出ることになっています。
さらに契約をする際にはしっかりとした本人確認が必要となってきます。

リース物件の廃棄

リースに出される設備には機器の寿命であったり契約期限があります。
そういったものはリース会社に戻されリース会社の責任で処分をすることになります。
ただ棄てればいいというわけではなく、家庭ごみの分別のように廃棄物処理法の定めに従って処分する必要があります。

廃棄物処理法


廃棄物処理法によると、廃棄物を排出する事業者が責任をもって処理するものとされています。
例えばパソコンを棄てるときは「産業廃棄物」のなかの廃プラスチックや金属くずの混合廃棄物として処理しなければいけません。

自動車リサイクル法

自動車リースに関しては、自動車リサイクル法に従います。
この場合、リース会社が自動車の所有者となっているので、リサイクル料金などの預託義務や使用済み自動車の引渡し義務をリース会社が負うことになります。

家電リサイクル法

家電リサイクル法は、家電製品の小売業者がメーカーに対して収集とリサイクルを義務づけているものです。
リース会社が家電製品をリースし、リース期間終了後にユーザーから返還を受けて廃棄する場合は、リース会社が排出者としてリサイクル費用を負担することになります。

個人とリース

個人がリースを利用する場合には、企業の場合とは違った法律の適用を受けます。
たとえば、消費者契約法や特定商取引法が適用されます。

消費者契約法


消費者契約法は、個人と事業者とでは、情報量や交渉力において事業者が有利な立場に立っていることから、消費者を擁護するために制定された法律で、消費者と事業者とが締結するすべての契約が対象となっています。
そして、事業者が消費者に対して必要な情報を提供することや、事業者が事実と異なることを告げた場合に、契約の取り消しや損害賠償を行うことを規定しています。

消費者契約法とリース

リースにおいてもこの法律の適用がありますので、リース会社は消費者に対して、リース契約に関する必要な情報を提供することが求められています。
そのため、リース契約説明書のような説明文書を交付することが求められています。

特定商取引法

特定商取引法は、特定商取引(訪問販売、通信販売、役務提供等)を公正なものにすると同時に、購入者などが損害を受けないようにすることによって、購入者などの利益を保護することを目的としています。
契約締結後の一定期間内に、購入者が契約を解除できるクーリング・オフがその例です。
リースは、特定商取引のうちの役務提供契約にあたります。
そのため、リースは特定商取引法に従うことになります。

リースは契約に基づいて行われる

リースは契約として行われます。
リース契約には、ユーザー、リース会社、サプライヤーの三者が関わることになります。
ほとんどのリース契約において、契約書が作られることになります。

リースは契約


OA機器をリースしようとした場合リース契約が発生します。
リース取引は、リース会社とユーザ一とのリース契約、リース会社とサプライヤーとの売買契約から成り立っています。
これらの契約はそれぞれ別個の契約ですが、契約条項は密接に関係しています。

契約に必要な基本的要素

リース会社はユーザーが希望する機器、メーカーを受け希望メーカーから購入しユーザーに届けることになります。
リース物件の所有権はリース会社にあります。
リース料のなかには、物件の購入代金や利息や手数料など、リースに関する費用すべてが含まれています。
リース契約は、契約期間の途中で解約することはできません。
物件の保守などメンテナンスはユーザーが行うことになります。
物件の欠陥、紛失、危険負担や瑕疵担保責任に関してリース会社は負担しません。
これらの文面を契約書には記載する必要があります。
その他、ユーザーの不渡り、倒産などに伴うリース料の不払い等は契約違反になり、支払い義務は残ります。

リースは自由に契約できる

リース契約を一般的に規定する法律はありません。
したがって、リース契約は民事法の一般原則「契約自由の原則」に従います。
リースを業として行う場合にも規定する法律は存在しません。

特別な法律がない

リース契約について定めた特別な法律が存在しません。
民法や商法にも具体的な定めがないため、リース契約に関しては、民事法の一般原則である「契約自由の原則」に従って行われることになります。
契約自由の原則というのは、契約締結の自由、相手方選択の自由、契約内容の自由、契約方式の自由という4つの自由のことをいいます。

リースは契約自由の原則に従う

自由に決められます
リース契約が契約自由の原則に従うということは、契約の当事者であるリース会社とユーザーとが契約内容を自由に定めることができるということですが、契約書を作成するのが一般的となっています。
契約書に関しては、公益社団法人リース事業協会がリース契約の基本的な事項を定めた「リース契約書(参考)」を作成して公表しています。

事業としてのリースにも特別な法律はない

リースを事業として行う場合にも、特別な法律があるわけではなく、国等に届け出る必要はありません。
ただし、中古品をリースする場合には、多少の注意が必要です。
リース会社は、買い取った中古品をユーザーにリースすることになりますが、その中古品をリース期間満了後に売却する場合には、リース会社は古物営業法の許可を得る必要があります。

リースに印紙は必要?

一般に課税文書には印紙を貼付しなければいけません。
印紙を貼付するのは、印紙税を納税するのが目的です。
しかし、リース取引においては、印紙の貼付は必要とされません。

課税物件表

課税文書には印紙の貼付が必要となります。
印紙は、収入印紙のことで、契約書や領収書に貼付します。
それによって、印紙税という税金を納税できます。
印紙税は、文書に課される国の税金ですが、すべての文書が課税されるというわけではありません。
すべての文書の中から、事業活動に伴って作成する契約書や領収書などの、印紙税法の「課税物件表」に掲げる文書だけが課税の対象となります。

リースと印紙の関係

印紙は必要ありません
リースについてみると、リース関係の契約書は「課税物件表」に掲げられていません。
したがって、リースにおいて収入印紙を貼付する必要がないということです。

リース契約について

平成元年3月までは「賃貸借契約書」が課税物件表に掲げられていたので、賃貸借であるリースの契約書は、賃貸借契約書としての扱いを受け、印紙税の課税文書でした。
しかし、平成元年4月から賃貸借契約書が課税物件表から削除されたため、リースの契約書は不課税文書となりました。
リース会社とサプライヤーは、リース契約締結後に売買契約を締結します。

契約の段階

契約のときに、リース会社はサプライヤーに注文書を発行します。
この注文書が売買契約の申込みを証明する文書です。
そして、サプライヤーは注文請書を作成してリース会社に発行します。
この注文請書が売買契約書です。
リース取引の主な対象物件である事務用機器や産業機械等の売買契約書なども、印紙税法の課税物件表に載せられていません。
したがって、これらの注文請書に収入印紙の貼付は不要です。

非営利法人のリース会計

非営利法人もリースを利用する場合には、会計基準に従います。
従来、病院、学校、公益法人などの非営利法人に関しては、会計基準は整備されていませんでした。
しかし、非営利法人においてもリースの利用が広く行われていることから、最近になって公益法人に関しても会計基準お整備が進んできました。

病院

病院を対象にした会計基準を「病院会計準則」といいます。病院会計準則は、昭和40年に制定されました。
その後、企業会計分野における会計制度改革の進展にあわせて、平成16年に改訂されました。
その目的は、「すべての病院を対象に、会計の基準を定め、病院の財政状態及び運営状況を適正に把握し、病院の経営体質の強化、改善向上に資すること」となっています。
リース取引に関して、病院会計準則とリース会計基準との違いは、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引とを区分することは同じですが、ファイナンス・リース取引の会計処理方法が売買処理だけになっている点が、リース会計基準との違いです。

学校


学校法人を対象とした会計基準を「学校法人会計基準」といいます。
昭和46年に制定され、その後平成20年に改正をうけています。
学校法人会計基準では、リース取引においても一般企業の会計基準と同じ会計処理となります。
ファイナンス・リースでは売買処理、オペレーティング・リースでは賃貸借処理が行われます。

公益法人

公益法人を対象とした会計基準を「公益法人会計基準」といいます。
公益法人会計基準は、公益法人の活動状況の透明性を高めるための改正を受けました。
この改正によって、公益法人は、貸借対照表などの財務諸表を作成することになりました。
リース取引においても、一般企業の会計基準と同じ会計処理となります。
すなわち、ファイナンス・リースでは売買処理、オペレーティング・リースでは賃貸借処理を行います。

リースの会計と税制

設備を導入する必要がある場合、リースを利用する選択肢において、リース会社に関して適用される制度があります。
リースには、リース独自の会計処理方法や特別の税制に従います。

会計の場合


リース会計基準における資産の計上方法を説明します。
所有権移転ファイナンス・リース取引と、所有権移転外ファイナンス・リース取引とでは、扱いが異なります。
すなわち、リース会社は、所有権移転ファイナンス・リース取引についてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース投資資産として資産に計上します。
それから、次の3つの方法で会計処理を行います。
リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法、売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法という3つの方法のうち一つを選択して会計処理を行います。

税制の場合

リース税制では、リース会社がリース取引に関して、リース讓渡を行ったものとされます。
すなわち、長期割賦、販売等として所得の計算をします。
そのため、リース料収入は売上として計上するので、益金となり、売上原価を損金に算入できます。
リース会計基準の適用をうけるリース会社は、利益が前倒しになることから、税務上、利息相当額部分を20パーセントにして、所得の計算をすることを選択することが、特例で認められています。

賃貸処理でリースを行う

リース取引においては、賃貸処理で行うことができる場合があります。
中小企業の多くは、賃貸処理を行っています。

賃貸処理

リースで物件を導入する際に、所有権移転外ファイナンス・リース取引を行う場合、賃貸処理で行うことができる場合があります。
リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引について、少額リース資産の賃貸借処理が認められています。
また、中小企業は、中小企業会計指針に従い、これまで同様、所有権移転外ファイナンス・リース取引を賃貸借処理できます。

リース会計基準

リース会計基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引が次の要件のいずれかにあたる場合には、賃貸借処理ができます。
重要性の低い資産に関して、購入時の費用処理がなされていて、個々のリース物件のリース料総額が基準額以下である場合で、かつ期間が1年以内の場合、企業の事業内容からみて重要性の低いリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下の場合のいずれかの場合には、賃貸借処理ができます。

中小企業の会計処理


中小企業の場合には、若干異なります。
中小企業は、中小企業庁、商工団体などが作成した中小企業の会計に関する基本要領にしたがって、リース取引に係る借手は、賃貸借取取引又は売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う」こととされました。
実際に、中小企業のほとんどは賃貸借処理をしています。

会社計算規則

会社計算規則で、会計監査人設置会社や公開会社は、注記表を作成することが義務となっています。
そして、ファイナンス・リース取引で賃貸借処理を選択した場合、リースする固定資産に関して注記を付けるることが義務付けられています。
注記には、貸借対照表、損益計算書の欄外に会計に関する情報を示すことで、株主や債権者に対して情報を開示する意味があります。

税制の扱い

税制において、会計上、リースを賃貸借処理した場合、リース料は償却費として損金経理した金額に含まれます。売買処理では必要とされる減価償却の記載は、賃貸処理では、記載は必要ありません。
消費税の扱いは、賃貸人から賃借人へのリース資産の売買として扱います。
この点は、売買処理と賃貸処理とで違いはありません。